研究概要 |
我々は,ミトコンドリア膜への酸化作用で心筋症を引き起こすアドリアマイシンを投与した心不全ラットでTc-99m MIBI(MIBI)の心筋からの洗い出しをガンマカメラを用いて計測し,アドリアマイシン心筋症では正常対照と比べ,Tc-99m MIBIの心筋からの洗い出し率に有意な上昇を認めた。さらに,このTc-99m MIBIの心筋からの洗い出し率の亢進と障害マーカーである血清トロポニンT値あるいは組織学的障害スコア自体と有意な正相関があることに注目し,アポトーシスを表すマーカーであるannexin Vの集積とMIBIの洗い出し亢進を比較し,両者の相関からMIBIの洗い出し亢進がミトコンドリア機能を反映している可能性を検証した。他方,streptozotocinを投与した生後10週のWistar-Kyoto系ラット10匹と対照ラットに麻酔後にMIBI 74MBqを大腿静脈より静注し,2検出器型ガンマカメラで10分,60分および120分心筋と全身のカウントを収集し,10分からの洗い出し率を算出した。心筋の%ID/gは対照と比べ糖尿病ラットで有意な低下がみられたが,MIBI洗い出し率には両群間に有意差を認めなかった。心不全を示す糖尿病性心筋症患者7例においてMIBI 600MBq静注後15分から3時間までの心筋からの洗い出し率を正面像に心筋と縦隔に関心領域を設定して計測されるH/M比から算出した。糖尿病性心筋症患者と対照健常者のMIBI洗い出し率を比較した結果,ラットと同様に洗い出し率の有意な亢進はみられず,逆に低値を示す傾向がみられ,糖尿病性心筋症とアドリアマイシン心筋症の発症機i序の差異が示唆された。
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