研究概要 |
本研究の目的は,正常症例の大規模なデータベースの中から選び出した類似画像を,読影対象画像から差分して病巣陰影を強調する類似差分画像法を開発することである。平成15年度と平成16年度の2年間で得られた研究成果は以下の通りである。ここでは,読影の対象となる画像をターゲット画像,正常胸部写真の画像データベースから選ばれたターゲット画像と似ている画像を類似画像と呼ぶことにする。 1.車載型CR肺癌検診を実施している岩手県予防医学協会の協力を得て,平成8年度〜平成9年度に撮影が行われた被験者の中から,正常の判定が得られた8776枚(女性5352枚,男性3424枚)のディジタル胸部単純写真を含む大規模画像データベースを構築した。 2.肺野の幅と長さでまず探索対象画像を絞込み,次に,画像の相関値を類似度の尺度として,類似度の高い10枚を類似画像として探索する方法を考案した。 3.類似画像の回転および平行移動を伴うグローバルマッチングと.テンプレートマッチング法に基づく局所的に非線形な画像変形を行って,ターゲット画像から画像変形後の類似画像を差分して類似差分画像を作成する手法を開発した. 4.肺野に腫瘤の存在する5症例のターゲット画像の類似差分画像(合計40枚)に対して,アーチファクトに関する主観的評価を行った。その結果,ターゲット画像に対する類似画像を10枚程度に絞り込めば,その中には,アーチファクトが比較的少なく,かつ,病巣陰影のコントラストが強調された類似差分画像が40%程度存在することが示された。したがって,類似差分画像は,肺癌などの胸部の病変の検出に有用であると考えられた。
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