研究概要 |
肝虚血再灌流傷害の軽減は、移植治療や肝切除術において重要である。Nitric oxide (NO)は微小循環の改善や白血球の接着や血小板の凝集の抑制により肝虚血再灌流傷害に有用であるとの報告がある一方、inducible NO synthase(iNOS)による過剰なNOは傷害性に働くことが報告されている。今年度我々は、ラット肝温阻血再灌流モデルにおいて、選択的iNOS阻害剤であるONO1714(ONO)を投与し、その効果および投与方法について検討している。雄性SDラット(210-260g)を用い、イソフルレン麻酔後開腹し、左葉および中葉への動脈、門脈、胆管を遮断、70%肝部分温阻血モデルを作製した。実験を虚血5分前にONOを陰茎静脈より0.05mg/kg bolus投与した群(I群)、再灌流5分前に同様に投与した群(II群)、虚血および再潅流それぞれ5分前に0.025mg/kgずつを投与した群(III群)と、vehicleを虚血及び再潅流5分前に投与したcontrol群(C群)の4群に分け、再灌流後1,6,10hrに腹部大動脈より採血しAST, ALT, LDH, NOxを測定した。また肝組織を採取しiNOS活性および病理組織学的所見を検討した。その結果、ASTは再灌流後10hrにおいてII群はC群に比し有意に低値を示した。ALT, LDHにおいても同様の傾向を認めた。血中NOx、組織中のiNOS活性は各群において有意差を認めなかった。組織学的には、再潅流後10hrにおいてC群に比しII群では肝細胞の膨化、好酸性変性あるいは帯状壊死は軽減していた。引き続き実験を継続するが、ラット肝温阻血再灌流傷害に対して、iNOS阻害剤ONO1714の投与は有用である可能性がある。
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