研究概要 |
この研究期間に3つ実験を行い,以下の知見を得た. 【実験1】 tumor necrosis factor(TNF)-αやinterleukin(IL)-1β等のproinflammatory cytokineは虚血再灌流傷害において重要な役割を担う.我々は,ドナー心の長時間保存中でのサイトカイン産生抑制が,移植後のドナー心機能を改善するか否かについて,12時間保存後の同所性心移植モデルを用いて検討した.結果として,proinflammatory cytokine抑制剤を添付した灌流液で灌流保存を行った群の方が,保存液のみで灌流を行った群に比較して移植再灌流後の循環動態は安定しており,病理組織学的にも保存状態は良好であった.このことから,保存中のproinflammatory cytokine産生抑制は,移植後の安定した循環動態を得るための有効な方法であると考えられた. 【実験2】 長時間心保存のための至適保存法を検討するため,ドナー心12時間保存において,11時間単純浸漬後に1時間冠灌流を加えた(SI+CP)心保存法と12時間持続冠灌流(CP)法とを,同所性心移植モデルを用いて検討した.結果として,2方法による心移植後の循環動態に有意差はなく,また心筋の浮腫はCP群に比較しSI+CP群で有意に低かった,このことから,SI+CP法は長時間心保存に適した保存法と考えられた. 【実験3】 Cyclooxygenase(COX)-2は炎症反応発現に関与し,虚血再灌流障害等で誘発された反応の進行,悪化に関与することが知られている.我々は,長時間保存後の移植心機能に対するCOX-2抑制の効果について,12時間低温単純浸漬後の同所性心移植モデルを用いて検討した.結果として,.選択的COX-2抑制剤を心移植後再灌流前に投与された群の循環動態は,コントロール群に比較して有意に良好であった.このことから,再灌流時におけるCOX-2抑制は長時間保存後の移植心機能を改善すると考えられた.
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