研究分担者 |
二村 雄次 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80126888)
梛野 正人 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (20237564)
新井 利幸 名古屋大学, 医学部附属病院, 助手 (80335041)
濱口 道成 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90135351)
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研究概要 |
【背景】Src homology 2(SH2)ドメインを持つtyrosine phospatase substrate 1(SHPS-1,p84,BIT, and SIRP)は、神経細胞、免疫細胞等に発現している細胞膜貫通型糖蛋白質である。SHPS-1蛋白の機能として細胞増殖、遊走をコントロールしている事が明らかに成ってきたが、上皮系細胞におけるSHPS-1の機能についての報告は少ない。我々はSHPS-1蛋白発現の局在と、臨床病理学的因子および予後について検討した。 【方法】乳癌細胞株および63例の乳癌組織を用いSHPS-1蛋白発現およびその細胞内局在について確認した。抗体はSHPS-1(rabbit polyclonal antibody, Neomarkers)。検討因子は年齢、病期、組織型、Histological Grade, mitotic index(MI)および予後とした。 【結果】ヒト乳癌細胞株を用い、RT-PCR法にてC末端領域にプライマーを設定しSHPS-1mRNAを確認し、Western Blottingにて約100KdaのSHPS-1蛋白を認めた。 免疫染色による検討により非腫瘍性上皮細胞の膜にSHPS-1発現がみられた。乳癌細胞では22例(35%)でSHPS-1蛋白が細胞質内に過剰発現(C+)していた。41例では発現はみられなかった(C-)。(C+)は、(C-)に比べ、MIが1.86±1.6対0.71±0.56と細胞増殖能が高かった(p<0.05)。(C+)は、(C-)に比べHistological Grade2,3の症例が95%対70%(p<0.05)で高度に悪性の細胞異型を示していた。(C+)は、(C-)に比べOverall survivalおよびDisease Free survivalともに有意に低下していた(p=0.044,p=0.015) 【結語】細胞質内過剰発現(蓄積)を来したSHPS-1蛋白はSHPS-1遺伝子変異に起因する可能性があり、SHPS-1遺伝子は有力な癌治療の候補と考えられた。
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