研究概要 |
【目的と方法】移植肝の臓器viability低下の主要因である肝虚血再灌流傷害の傷害発生機序に,炎症性geneの誘導から引き起こされるapoptosisやnecrosisなどが関連することから,これらのgeneの転写因子であるNF-κB (Nuclear transcriptional factor-κB)に着目し,傷害抑制を最終目的に,その意義・作用の検討を行う。我々はAdenovirus vector (Ad)をドナー肝の門脈・肝動脈からex-vivoで注入・クランプ・保存(clamp technique : CT)によって移植後6時間から,またドナーへのAdの静脈内投与(pretreatment : PT)によってさらに早期から,目的gene発現させることに成功し報告した。これら2種類の方法を応用し,AdI κB (Inhibitor of κB)の遺伝子導入・NF-κB抑制することによって,NF-κBの虚血再灌流傷害における意義・作用の検討を行った。さらにapoptosisやnecrosisの変動を検討した。 【結果】H15年度:Control (Adによる遺伝子導入なし)となる18時間保存・移植後の凍結肝組織を経時的(再灌流後1,3,6,12,24,48時間)に検討した:結果から, ・NF-κBが1-3時間と6時間に二峰性のピークを示すこと ・そのNF-κBの発現とサイトカイン特にTNF-αの経時的変化から,肝虚血再灌流傷害においてNF-κBの1stピークが炎症性サイトカインの発現に関与していることが示唆された。 H16年度:AdIκBによるIκB発現モデルを,それぞれCTとPTで検討した結果から ・AdIκBタンパク質の発現の経時的変化:CTでは6時間以降,またPTでは1時間から発現を認めた。 ・PTによる1^<st>ピーク抑制モデルの肝組織において,iNOSの発現抑制やTUNEL法にてapoptosis,組織学的検討・肝逸脱酵素からnecrosisなどが抑制されることをnの集積にて確認した。 H17年度:DNA laderingによる検討で,これらを再確認し,研究総括を行った。 【まとめ】CTとPTの二種類のgene導入によって,NF-κBを異時性に抑制に成功した。PTによってNF-KBの1stピーク発現をコントロールすることで肝虚血再灌流傷害を抑制可能であった。逆にCTでは以前報告と同様に傷害が増悪した。これらから転写因子NF-κBの経時的変動と炎症性geneの発現の推移からも1stピークは傷害を引き起こすと考えられ,2^<nd>ピークは,傷害からの修復geneの発現が行われているのか未だはっきりしないところも多いが,保護的であることが示唆された。
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