研究概要 |
膵島移植における最大の問題点はその効率の悪さである.すなわち,膵臓移植であれば半分の膵臓でレシピエントの糖尿病を治癒しうるのに,膵島移植においては平均2個の膵臓を要する.その原因の一つとして,急性拒絶反応以前の移植早期に50〜70%もの膵島が消失してしまうことがあげられている.その原因の一つとして移植膵島への好中球浸潤を考え,以下の実験をおこなった.1)移植膵島における好中球浸潤の確認.2)移植膵島の数的変化の定量化.3)好中球エラスターゼ阻害剤投与により好中球浸潤の抑制と移植膵島生着率改善. 【結果】 1)移植膵島における好中球浸潤は移植3時間後から確認できた. 2)研究代表者の柴田はporcine islet allotransplantationの実験系における生着膵島数の評価法として「肝臓単位組織面積あたりの膵島数」を用いていたが,ラットを用いた本実験系においては肝組織面積が小さく,値が不正確であると判断した.そこで,単位肝組織体積中のインスリン含有量を測定することにより,膵島の生着率を判定する方法を考案し,その手法を確立した.その結果,移植後24時間後には32.4±5.3%にまで膵島が減少していることを明らかにした. 3)好中球エラスターゼ阻害剤10mg/kg/hを移植前15分から3時間後まで投与し,移植24時間後の膵島の生着率を測定したが,非投与群と差を認めなかった. 以上より,ラット同種膵島移植の実験系において,好中球エラスターゼ阻害剤のレシピエントへの投与に有効性を見いだすことは出来なかった.
|