研究課題
基盤研究(C)
胃運動は神経制御に加え、消化管ホルモンの支配を受ける。cholecystokinin(CCK)は小腸の細胞より分泌され、gastric motilityとgastric emptyingを抑制的に制御する。健常人の胃食道逆流発生には一過性の下部食道括約筋弛緩(TLOSR)が大きく関与し、胃内圧の上昇が胃上部にあるメカノレセプターを刺激し、TLOSR頻度を増加させる。健常胃では、胃拡張圧刺激によるTLOSRの誘発に、CCKが関与する。胃切除後の残胃運動機能の制御と胃食道逆流へのCCKの関与について、術式の差異・十二指腸圧刺激による残胃運動変化と内因生CCKの変動の関連を明らかにした。幽門側胃切除犬実験モデル犬では、後壁吻合と断端吻合において残胃のgastric motilityに有意な差異がみられ,断端吻合群では抑制される。残胃ではgastric emptyingが、より急速におこるためfeedback機構が作動して残胃運動が制御されているためで、測定したplasma CCK値は有意に上昇し、CCKが残胃運動制御に深く関与していることを示唆した。同実験系で、十二指腸拡張刺激を加えても、残胃運動は抑制される。拡張時のplasma CCK値は上昇し圧刺激がメカノレセプターを通してplasma CCK値を上昇させることが示唆された。臨床においては、幽門側胃切除術の術式で手縫い吻合と断端器械吻合群間に有意差を認めないが、器械吻合における断端吻合と後壁吻合とにおいて、後壁吻合に食物残澄が残る傾向にあり、残胃運動の抑制がおきていた。しかし、逆流性食道炎の発生に差異を認めない。胃全摘出術において、小腸で形成した代用胃の空腸間置の有無で比較すると、空腸間置をした群に逆流性食道炎の発生を認めた。代用胃における圧の上昇刺激がCCK上昇と逆流性食道炎の発生に関与するメカニズムについて、今後、さらに研究を進めていく。
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