研究概要 |
目的:大腸癌肝転移の切除後には肝内再発が多く見られる。これは,手術時に見逃された肝内微小転移巣の増大によるものと考えられる。本研究では,「肝内微小転移巣の検出における免疫組織化学染色の有用性」および「肝内微小転移の臨床的意義」を解明する。 方法:1981年1月から2003年12月までに当科で切除された大腸癌肝転移129症例を対象とした。肝内微小転移を「組織学的検索により初めて発見される肝転移」と定義した。個々の症例において,肝切除標本のパラフィン包埋ブロックから2〜7個の組織切片を作成し,腸管上皮に特異的とされる抗サイトケラチン20抗体を用いた免疫組織化学染色を行って肝内微小転移巣を検出した。 成績:129例中114例(88%)の肝転移巣はサイトケラチン20陽性であった。一方,周囲肝実質の正常肝細胞および胆管上皮は全例で陰性であった。肝転移巣がサイトケラチン20陽性の114例中77例(68%)において,免疫組織化学染色により肝内微小転移巣(211病変)が検出された。肝内微小転移巣は,多発肝転移(P=0.002)および切除後の肝内再発(P<0.001)と関連した。肝切除後の生存率は,肝内微小転移陽性例(累積10年生存率21%)が陰性例(同66%)に比し不良であった(P<0.001)。検出された肝内微小転移巣211病変のうち189個(90%)はKi-67染色陽性であった。 結論:大腸癌肝転移において,免疫組織化学的手法は肝内微小転移巣の検出に有用である。肝内微小転移は高度な肝転移の指標であり,切除後の肝内再発および不良な予後の予測因子である。Ki-67染色の成績から,肝内微小転移巣の多くは細胞分裂能を有するvividな癌細胞から構成されるものと考えられる。
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