研究概要 |
最近、クローニングされた新しい血管新生促進因子EG-VEGFは内分泌腺細胞の内皮に選択的に作用する分子として知られている。大腸癌細胞はestrogen receptor βを持ち、内分泌ホルモンの影響をうけることから、EG-VEGF分子とヒト大腸癌の関連性を検討した。まず当科における大腸癌切除症例に対してEG-VEGF mRNAの発現と臨床病理学的因子との関連性を検討した。EG-VEGF mRNAの発現は隣接正常粘膜では4%であったのに対して、原発巣では31%に認められた。臨床病理学的因子との検討では奨膜浸潤,脈管侵襲,リンパ節転移,腹膜転移,肝転移,血行性転移陽性症例にEG-VEGF mRNA発現陽性率が高いことが認められた。また生存率の検討においてもEG-VEGF mRNA発現陽性例では陰性例と比較して不良であった。予後因子を臨床病理学的因子およびEG-VEGF mRNA発現の多変量解析を用いて検討すると腹膜転移,肝転移、EG-VEGF mRNA発現が独立因子として認められた。特に血行性転移に対する独立因子はリンパ節転移、EG-VEGF mRNA発現であった。 次に、低EG-VEGF発現型大腸癌細胞株にEG-VEGF遺伝子を導入後、マウスに移植し増殖能、転移能を検討すると、EG-VEGF遺伝子導入細胞群において血管新生、細胞増殖ならびに肝転移率が有意に増加した。また高EG-VEGF発現型大腸癌細胞株に対してanti-sennse EG-VEGF DNAを導入すると血管新生ならびに腫瘍増殖率が抑制した。 今回検討をおこなった新しい血管新生因子EG-VEGFは大腸において癌化により発現される因子であり、組織特異性は考えられるが、大腸癌特異的な血管新生因子であることが示された。
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