研究概要 |
【目的】胆汁酸レセプター(FXR)を介した胆汁酸の大腸発癌及び胆汁酸代謝に関連する遺伝子発現に対する作用を調べる。 【方法】FXRをK/OしたC57BL/6Nマウスとそのwild typeマウス(7週齢)に対し大腸癌発癌物質dimethylhydrazineを12週間皮下投与すると共に、CDCA、UDCAを含有する餌を投与し、43週齢で正常大腸粘膜および腫瘍組織のCOX-1、COX-2の発現を調べた。また、CA、DCA、CDCAを同マウスに投与し胆汁酸代謝関連遺伝子Bsep, Ntcp, Mrp2,Mrp3,Mrp4,Oatp1,Oatp2,LST-1,CYP7A, MDR-1a, MDR-1bのmRNA発現への影響を検討した。 【結果】COX-1、COX-2の遺伝子発現はFXRをK/Oすることにより増加した。CDCA投与ではFXRのK/Oに関わらずCOX-1の発現が著明に増加したが、COX-2の発現は変化を受けなかった。また、UDCAはwildではCOX-1、COX-2とも発現を上昇させ、FxR-K/Oでは変化しなかった。雄においては、FXRをK/Oすると対照群やCDCA投与群における腫瘍発生個数が抑制された。UDCA投与群ではFXRのK/O群で腫瘍発生が抑制される傾向が見られた。胆汁酸代謝遺伝子中、大腸で発現がみられたMrp3,Mrp4,MDR-1aではwild、FXR-K/O両マウスにおいてその発現に胆汁酸の影響は見られなかった。一方、FXRをK/OするのみでMrp3、Mrp4、MDR-1aの発現は低下する傾向が見られた。 【考察】FXRがCOX-1、COX-2発現に影響を与えること、UDCAはFXRを介してCOX-1、COX-2発現を変化させることが示唆された。また、CDCAがFXRを介して大腸発癌を促進している可能性が示唆された。さらに、マウス本来の大腸内に存在する胆汁酸がFXRを介してMrp3、Mrp4、MDR-1aの発現を常時刺激している可能性が考えられた。
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