研究課題
基盤研究(C)
まずマウスの骨髄移植の系を確立した。前処置として、抗腫瘍剤Cyclophosphamide(CYP)を用いた。実験動物は、レシピエントとしてBALB/c、ドナーとしてC57BL/6を用いたMHC-mismatch combinationとした。レシピエントにnon-lethal doseのCYP(200mg/kg)を投与したのち、ドナーから分離した骨髄細胞を移入した(骨髄ミニ移植)。続いて、骨髄移植後のgraft-versus-tumor effectを評価するため、レシピエントであるBALB/cマウス由来のtumor cell lineのcolon 26を用い、担癌マウスを作成した。具体的には、colon 26をBALB/cマウスの背部皮下に移植し、腫瘍径を経時的に計測した。このマウスに対し、CYPで前処置をおこなったのち、C57BL/6ドナーの骨髄細胞または脾細胞を移入した。ドナー細胞移入群では、CYP投与のみの群に比べ皮下腫瘍の縮小効果を認めた。しかし、GVHDを発症して死亡するレシピエントが多く、生存期間の延長を示すには至らなかった。そこで、GVHDを制御する骨髄移植プロトコールの開発のため、経時的なモニタリングが容易であるラットのアロの系を用いて、CYPのdose設定と、併用処置について検討したところ、CYPを150mg/kgにすると、GVHDを起こすことなく骨髄移植が成功することがわかった(骨髄キメラ)。また200mg/kgのCYP処置でも、一時的にFK506を併用すると、GVHDを起こすことなく安定した骨髄の生着が得られ、心移植ならびにMLRにおいてドナー特異的免疫寛容が成立していることを確認した。抗腫瘍効果があり、免疫抑制を要さない点で、本研究でのプロトコールは、進行肝細胞癌に対する肝移植において応用が期待できる。
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