研究概要 |
1.hTERT結合蛋白質であるhuman PinX1の構造異常およびメチル化を解析したが明らかな異常は確認できなかった. 2.human PinX1は,標的分子とはならない可能性が示唆された.hTERTによらないテロメアの維持機構についてosteosarcomaの培養細胞株を用いて解析した.hTERTの不活はプロモーター領域のメチル化にはよらないことが明らかとなった.MAPKを介したhTERT遺伝子の発現抑制が誘導可能であり,細胞をsenescenceに陥れることが可能であった. 3.エストロゲンのテロメラーゼ誘導による,肝細胞分裂寿命の延長に関する基礎的検討をヒト肝培養細胞株(Hc-cells, hNheps, WRL)を用いて行った. 4.エストロゲン投与により,テロメラーゼ活性は24倍に上昇した.テロメラーゼ活性の上昇は,hTRETの発現増強によるものであった.さらにエストロゲンの長期添加実験では,添加群でテロメア長の短縮が有意に抑制された. 5.四塩化炭素肝硬変モデルラットを作製し,外因性エストロゲン投与によるテロメア長の短縮抑制効果を検討した.エストロゲン投与群で有意にテロメア長短縮が抑制されていた. 悪性腫瘍におけるhTERT遺伝子の不活化はヒト悪性腫瘍の老化を誘導する事が可能であり新たな,悪性腫瘍の治療戦略と成りうる可能性が示唆された. さらに,肝細胞の分裂寿命は外因性のエストロゲン投与により延長させることが可能であり,長生き要因として臓器延命効果の可能性が示唆された.
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