研究概要 |
【背景】:laminin-5γ2 chainは本来基底膜に存在する。PykeらやSordatらはlaminin-5γ2 chainが腫瘍先進部から遊離する癌細胞の細胞質に強く発現することを報告した。われわれも大腸癌においてlaminin-5γ2 chainが浸潤先進部で強発現すること、リンパ節転移・局所再発と有意に関連することを見出した(Dig Dis Sci 48:272-278,2003)。一方、MMP-7についても同様の結果を見出している(Br J Cancer 84:1317-1321,2001)。さらにlamnin-5γ2 chainとMMP-7が協調して籏出を高度にする傾向があることも見出した(Dig Dis Sci.48:1262-7,2003)。以上の結果からMMP-7とlaminin-5γ2 chainの発現の問に何らかの関係があることが示唆された。その機序を解明することを本研究の目的をした。 これまでの検討で得られた結果は、1)L-10細胞,HT-29細胞ではMMP-7の発現が陽性である,一方、SW620,Colo320D, LS174T細胞ではMMP-7の発現が陰性である。2)MMP-7発現陽性細胞はlaminin-5γ2 chainの発現が陽性である。MMP-7発現陰性細胞はlaminin-5γ2 chainの発現が陰性である。 さらにL-10細胞とHT-29細胞を使って、laminin-5γ2 chainとMMP-7の発現の関連性を検討した。 【方法】:laminin-5γ2 chainとMMP-7発現陽性のL-10細胞とHT-29細胞を用い、抗MMP-7抗体を添加したメデイウムで24時間培養し、laminin-5γ2 chainとMMP-7の発現の有無を免疫組織化学的に検討した。 【結果】:抗MMP-7抗体非添加のメディウムで培養したL-10細胞,HT-29細胞ではlaminin-5γ2 chainとMMP-7の発現が前述のように陽性であった。一方、抗MMP-7抗体添加のメディウムで培養したL-10細胞とHT-29細胞でもlaminin-5γ2 chainとMMP-7の発現が同様に観察された.以上の結果からは、laminin-5γ2 chainとMMP-7との発現の関連性が見出せなかった。 【考察】抗MMP-7抗体には活性型と非活性型がある。今回の検討で使用した抗体が非活性型であったこともあり、腫瘍細胞への十分な作用が働かなかった可能性がある。今後、活性型抗体についても検討を進める必要がある。
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