研究概要 |
小口径人工血管には優れた抗血栓性と良好な組織親和性が求められるが、我々はこれまでに独自の技術によって血漿中フィブリンのみで被覆したフィブリンコート人工血管がこれらの条件を満たすことを確認した。今回我々は前年度に引き続き、自己血を用いて作製した自己フィブリンコート人工血管の有用性に関して検討した。 <方法>自己(ウサギ、Aグラフト)と異種(ヒト、Xグラフト)の血液を用いて2種類のフィブリンコート人工血管(内径2mm)を作製し、家兎50羽に対して両側頚動脈バイパスモデルを作製した。移植後1,3,7,10,14,30,60,180日にグラフトを摘出し、グラフト開存率、血清中抗グラフト抗体、グラフト血小板付着数、組織像を比較検討した。また血清中IgG、IgM、tPA、PAI-1を経時的に測定して比較検討を行なった。 <結果>最長180日までの観察期間中、術後10日に摘出したXグラフト1本のみ血栓閉塞していたが、他はすべて狭窄なく開存した。AグラフトではXグラフトより早期(移植後60日)に内皮様細胞がグラフト内腔を被覆した。血清中抗グラフト抗体は移植後1日に高値を示したが、グラフトがXグラフトより有意に少なかった(0.17±0.02vs.0.46±0.06O.D._<490nm>, p<0,0001)。またグラフト血小板付着数は術後10日に最も増加したが、AグラフトがXグラフトより有意に少なかった(10.3±1.6×10^6vs.17.4±1.4×10^6/mm^2, P<0.0001)心血清中IgG, IgM, tPA, PAI-1はいずれもAグラフトがXグラフトより有意に少なかった(p<0.01)。 <結論>自己フィブリンコート人工血管は、免疫反応が少なく、優れた抗血栓性および組織親和性を有し、長期開存が期待できる小口径人工血管となり得ることが示唆された。
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