研究課題
基盤研究(C)
アデノウイルスの増殖に関わるE1AおよびE1B遺伝子をテロメラーゼ構成成分の一つであり、その活性と相関するhTERT (human telomerase reverse transcriptase)プロモーターにより駆動することにより、癌細胞で特異的に増殖可能なアデノウイルス(Telomelysin;開発コードOBP-301)を構築した。また、オワンクラゲ由来の蛍光蛋白質であるGFP (Green Fluorescent Protein)をコードするGFP遺伝子を発現する非増殖型アデノウイルスベクター(Ad-GFP)を準備した。ヒト癌細胞にAd-GFP 0.1 multiplicity of infection (MOI)、OBP-301 1.0 MOIで感染させると、24時間以内に蛍光顕微鏡下に顕著な緑色蛍光が観察された。一方、線維芽細胞などの正常細胞では、発色が認められなかった。したがって、Ad-GFP/OBP-301共感染により癌細胞特異的にGFP発現を誘導することが可能である。次に、ヌードマウスの皮下にAd-GFP、TRADを8 x 10^6 plaque forming units (PFU)ずつ投与しても、GFP蛍光はみられなかった。しかし、ヌードマウスの皮下にSW620ヒト大腸腫瘍およびA549ヒト肺腫瘍を形成し、同量のAd-GFP/OBP-301を腫瘍内投与したところ、24時間以内にGFP蛍光が観察され、3-7日をピークに持続的なGFP発現が検出された。観察には150W Xenonランプで蛍光励起し、長波長フィルターを通して浜松フォトニクス製の3CCDカメラC5810にて画像を取り込み、Photoshop画像解析ソフトにより処理を行った。露出時間は3秒を基本とし、感度をあげるために6秒の画像も追加した。この条件で、A549細胞をヌードマウスの胸腔内に投与して作成する胸膜播種モデルにおいて、Ad-GFP/OBP-301の胸腔内投与後5日目にマウスを屠殺、肉眼的に確認できない微小播種結節がGFP蛍光にて同定できるかどうかを検証した。摘出組織を組織学的に観察し、転移結節であることを確認してその感度を検討した。Ad-GFP/OBP-301ウイルス・カクテルの腔内投与は、肉眼的に検出できない微小播種転移巣の可視化に有効であり、レーザーなどの広範囲局所焼灼法などとの併用で将来的な臨床応用も可能と思われる。
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