研究概要 |
【目的】薬剤徐放機能を備えたステントからの徐放薬剤を選択する実験を行った.薬剤の選択は冠動脈狭窄抑制の可能性のあるものを選択した.冠動脈ステント留置後再狭窄抑制薬剤評価のため,ブタ冠動脈狭窄モデルを作製し血管内皮機能改善と血管平滑筋活性抑制機能を併せ持つアムロジピンの投与を行いその有効性を評価した. 【方法】SPF/ランドレースポーカインの左冠動脈前下行枝にステントを過拡張の状態で留置し狭窄モデルを作製した.コントロール群(n=9)には術後には抗血小板等の薬剤投与を行わず,アムロジピン投与群(n=6)にはアムロジピンのみを0.35mg/kg/dayで投与し,それぞれの留置部血管の評価に血管内超音波(IVUS)を用い評価しp<0.05を有意とした. 【結果】ステント留置時冠動脈のIVUS評価では,ステント留置前血管径Pre in-stent diameter[mm],ステント留置直後の血管径Postin in-stent diameter[mm],ステント留置時血管面積Post in-stent area[mm^2]及びステント留置時過拡張比Rate of expansion[%]においてコントロール群とアムロジピン群に有意差なく,同一条件でステントは留置された.ステント留置4週間実験終了時のIVUS評価では,実験終了時冠動脈径End-point diameter[mm],実験終了時冠動脈線径狭窄率Rate of stenosis diameter[%],実験終了時冠動脈面積狭窄率Rate of stenosis area[%]ではアムロジピン群はコントロール群に比し優位に大きくその群間に有意差を認めた. 【結論】ブタ冠動脈狭窄モデルは,ステント過拡張にて慢性刺激を冠動脈に加えることで人為的冠動脈狭窄を引き起こす.ステント過拡張の刺激にて血管内膜,中膜及び外膜には円周方向のシアーストレスが慢性的にかかり,内皮機能障害,血管平滑筋細胞に活性刺激が加わる.NO産生抑制,酸化ストレスの発生,血管平滑筋細胞のL型カルシウムチャンネルの活性を引き起こし,静止型から活性型へと変化させ複合的に冠動脈狭窄を引き起こす.カルシウム拮抗薬アムロジピンは,これらのチャンネルを正常化することで,冠動脈狭窄を抑制する可能性が示唆された.臨床においてアムロジピンの経口投与でもステント留置後の狭窄を抑制できる可能性が示唆された.アムロジピンは薬剤徐放型ステントの対象薬剤としても非常に有望である.
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