研究概要 |
研究代表者である古屋一英は、2003年度から2004年度の基盤研究(C)(2)において「細菌性リポ多糖類(LPS)を用いた脳虚血耐性誘導現象における小胞体(ER)ストレスシグナルの解析」について3,200(千円)の研究経費にて研究を行ってきた。この実験では、虚血耐性獲得メカニズムのなかで、ERストレスの軽減が関与しているという仮説を立て、実験を行った。具体的には、非致死的虚血刺激は、1)ストレスセンサー蛋白質Irelの活性化を増強し、下流へのシグナル伝達を促進させ、GRP78をはじめとする小胞体分子シャペロン群のup-regulationを起こすことによって神経細胞死を引き起こしにくくさせ、2)ストレスセンサー蛋白質PERKを介する(本実験では、まだ証明されていないが)翻訳開始因子(eIF2α)のリン酸化を抑制することによってERストレス負荷を軽減する、というものである。 実験では、2分前脳虚血によるラット虚血耐性モデルを用いて、2分虚血後、2+6分虚血後、6分虚血後海馬CA1領域におけるGRP78、Ire1-α、p-PERK、p-eIF2αの発現をwestern blot法にて検討した。前脳虚血モデルでは、リン酸化eIF-2αの発現が、preconditioning(前処置)群、虚血耐性群で抑制されており、仮説通りERストレスが抑制されていることを強く示唆する実験結果であった。 また、局所脳虚血では、Grp74,Grp94共に、LPSによる虚血耐性に関与していることが示唆されたが、特にGrp94の関与が強いと思われた。
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