研究概要 |
家兎腰椎椎間板にOsti, Vernon-Robertsらの方法に従い、L3/4,L4/5,L5/6椎間板左側方にメスを用いて髄核に達しない切開を加え、実験的椎間板変性モデルを作製した。変形進行に伴う経時的なレントゲン像、病理組織像、プロテオグリガン合成能、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP 1、3、9、12、13)、誘導型Nitric Oxide合成酵素(i-NOS)mRNAの発現、NO生産量、TNF-αの変化を調べた。腰椎レントゲン撮影では、術後一ヶ月より徐々に椎間板腔狭小化、骨棘形成が起こり、組織所見でも経時的にSafranin-O染色性の低下が認められ、線維輪の断裂、ヘルニアの発生など、椎間板変性に類似の所見が認められた。椎間板プロテオグリカン合成能は、術後一ヶ月の変性初期には、一時的に合成能は術前の約二倍にまで増加したが、その後は経時的に減少した。MMP-1,3,9,12,13,TIMP(Tissue inhibitor of MMPs) 1,2をモノクロナール抗体を用いたSandwich enzyme immunoassay法により測定すると、MMP-1,3,9,12,13は変性進行とともに著しく増加するのに対し、TIMP 1,2はあまり変化しなかった。培養上清中のNitrite量をGriess法を用いた吸光光度計により測定し、NOの産生の変化をみると、術後一ヶ月ごろより髄核を中心にNO産生の増加が認められた。家兎静脈血中にi-NOSインヒビター(L-LMMA)を添加すると、NO産生量、プロテオグリカン合成能は著しく低下したが、MMP,TNF-α産生に変化を及ぼさず、レントゲン撮影、組織所見でみた椎間板変性所見にも大きな変化は認められなかった。しかし、同時にTNF-αインヒビターを投与すると、TNF-α産生とともにMMP産生が著しく抑制され、これに伴って椎間板変性所見も抑制された。椎間板変性過程には、基質合成低下よりも基質分解の亢進が大きく関与しており、基質分解に大きく関わるMMP,TNF-α産生を抑制することが変性抑制に重要であると考えられた。
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