研究概要 |
関節リウマチの関節破壊に,破骨細胞の分化,活性化による骨吸収の亢進が大きな役割を占めることが明らかになっている。抗炎症性サイトカインであるInterleukin-4(IL-4)はこの破骨細胞の分化を強力に抑制することから,IL-4の遺伝子療法の可能性をさぐるため基礎的検討を行った。まず,毒性が少なく,安定した発現を誘導できるアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いて,ヒトIL-4とIL-10 cDNAを組み込み,NIH3T3細胞に感染させて,その発現効率を検討した。IL-4とIL-10をそれぞれ単独に組み入れた場合は効率よく感染し,多量のサイトカインを分泌したが,両遺伝子を同時に組み込んだAAVではプロモータ近位部の遺伝子は強く発現するものの,遠位部の遺伝子の発現は著しく低下しており,多サイトカイン発現系については今後,検討を要するとおもわれた。次にIL-4遺伝子を組み入れたAAV(IL-4-AAV)を用いて,破骨細胞分化誘導に対する作用を検討した。ヒト末梢血単核細胞に対するAAVの感染効率を検討すると,T細胞,B細胞などの浮遊細胞と比較して,単球,マクロファージなどの付着細胞に効率的に感染されることが明らかになった。ヒト末梢血単球を分離後,RANKL,M-CSF存在下で培養すると5-10日後に象牙切片を吸収しうる破骨細胞が誘導された。この系にIL-4-AAVを感染させると破骨細胞の分化誘導が強力に抑制された。また,IL-4の破骨細胞誘導抑制作用についてマウス骨髄細胞を用いて検討し,転写因子であるc-Fos,NFATclの発現抑制がその作用機序として重要であることを明らかにした。以上より,本研究により関節リウマチの関節破壊の治療法としてIL-4の遺伝子療法が有用であることが示された。
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