研究概要 |
すでに、我々は平成15年度までの研究で、ラット腰椎椎体由来の骨芽細胞前駆細胞の一部にはプロゲステロン・レセプターを持ち、プロゲステロンによりin vitroで骨を形成する能力を持つ骨芽細胞前駆細胞群が存在することを報告した(Ishida and Heersche,1999)。平成16年度の研究課題は、閉経後の骨量減少にプロゲステロン反応性骨芽細胞の減少が関与していることを明らかにし、更にこの減少をエストロゲンで改善することができることを検討しようとするものであった。平成16年度の研究で、プロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞は6週齢時(性成熟前)では、オス・メスの両性に存在し、腰椎由来細胞1,000細胞中、1.5細胞(オス):1.8細胞(メス)を認めた。一方、性成熟後の24週齢では、腰椎由来細胞1,000細胞中、0細胞(オス)vs. 1.1細胞(メス)とオスの細胞では認められなくなった。この性成熟後の腰椎由来細胞において、エストロゲン(17β-estradiol)を作用させるとプロゲステロン・レセプターが骨芽細胞前駆細胞に誘導でき、腰椎由来細胞1,000細胞中、0.6細胞(オス):1.5細胞(メス)にプロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞が認められるようになった。さらにこの誘導されたプロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞はプロゲステロンにより、in vitroで骨を形成することが確認された。これらのことより、高齢群においてもエストロゲンでプロゲステロン・レセプター陽性骨芽細胞前駆細胞を誘導し、プロゲステロンで骨形成を促進出来る可能性がラットでは示唆された。この知見は、ヒトにおいても骨粗鬆症に対する薬物治療の1つのホルモン補充療法において、プロゲステロンとエストロゲンの用量および投与方法を確立することで、より効率的な治療を期待できることを示していると考えられた。
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