研究概要 |
関節リウマチ(RA)で炎症の主座となる滑膜は関節の運動に伴い機械的ストレスに曝露される。滑膜細胞に機械的(伸張)ストレスを再現性よく加えることができるFlexercellシステムを用いた。RA滑膜組織から得られる細胞を継代してタイプIコラーゲンをコーティングした上で培養し、伸張ストレスをかけることにより、滑膜細胞の形態変化が観察され機械的ストレスに反応していることが確認された。機械的ストレスによって影響を受ける低分子量G蛋白質Rho、Rac、Rasのprenylationを阻害するビスフォスフォネートのひとつアレンドロネートはRAにおける骨吸収を抑制した。関節滑膜における機械的(伸展)ストレスの関節破壊における役割を臨床的に明確にするために、骨びらんの形成部位と関節のストレスのかかる方向との関連を調査した。早期のRA患者における検討では、第1指では尺側に骨びらんの形成が多い傾向があり、第2指においては橈側により有意に骨びらんの形成が多いという結果が得られ、いずれも滑膜に対し機械的刺激がより強く加わる部位に骨びらんが多く形成されていた。伸張ストレスを受けやすいと考えられるRA患者由来腱鞘滑膜組織より分離した滑膜細胞を用いて培養すると破骨細胞様細胞が形成されdentine slice上に吸収窩を形成した。PCRではRA由来関節滑膜と腱鞘滑膜の滑膜細胞の双方にMMP-1,2,3,13とTIMP-1,2の発現を認めた。RAでは関節滑膜と腱鞘滑膜にほぼ同様のTNF-α、IL-1β、IL-6の発現が見られ、OAよりも発現が強かった。また破骨細胞分化誘導因子のRANKLが、関節滑膜のみならず腱鞘滑膜にも発現が認められた。TNF-α刺激によってOA由来滑膜細胞でも炎症性サイトカインの発現誘導が認められた。機械的ストレスは滑膜細胞に炎症性サイトカインやRANKL、さらにMMPsの発現を誘導し、滑膜の炎症のみならず関節破壊も増強にも関与している可能性が示唆された。
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