研究概要 |
家兎の椎間板変性モデルに対し自家骨髄間葉系幹細胞を椎間板内細胞移植し、その後の椎間板変性の抑制効果について検討しました。評価項目としてレントゲン写真による椎間板高の変化、腰椎矢状断のT2MRI像による椎間板の輝度変化、移植後2,4,8,16,24週時の椎間板の肉眼的所見、HE、safranine染色による組織学的検討をしましたが全ての項目で椎間板変性の進行を遅らせることが確認されました。また、免疫組織学的にLacZでマーキングした移植細胞の椎間板内での生存を確認しました。また、移植した幹細胞のcell viabilityに関しては移植椎間板の切片をアグリカン、II型コラーゲン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸で蛍光染色し移植細胞が軟骨系に分化していることが解かりました。そして、現在髄核の特異的マーカーとして報告されているHIF1α、GLUT1,MMP2を移植細胞が産生していることも免疫染色にて確認しました。これにより、間葉系幹細胞は自家椎間板内で髄核細胞に十分に分化可能であることが示唆されました。それを受けて家兎の自家間葉系幹細胞と髄核細胞を体外で共培養することで間葉系幹細胞を髄核細胞へ分化させる実験も始めました。結果は培養中の細胞を免疫染色するとアグリカン、II型コラーゲン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸の陽性細胞を認め、PCRによるRNAの遺伝子発現も同様に上昇し、軟骨類似の細胞に分化してきている可能性が示唆されました。 細胞移植に関しては、今回の動物実験においては同種移植にて移植椎間板に組織学的にも明らかな免疫反応は認めませんでした。これら全ての実験結果から、椎間板内細胞移植療法の有用性が高いことが示唆され、今後は臨床応用化に向けて大型動物における細胞移植実験、そしてヒトの細胞におけるin vitroでの細胞培養などの段階に進んでいく予定です。
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