研究概要 |
申請者はマウスを用いて,正常状態と敗血症病態での主要臓器に発現するToll-like受容体(TLR)サブタイプの発現をウエスタンブロット法,ノーザンブロット法および免疫組織染色を用いて比較検討した。この結果として,TLR受容体2,4,9はマクロファージや好中球などの炎症性浸潤細胞に豊富に認められた以外に,肺,心臓,肝臓,腎臓,脾臓などの主要臓器のさまざまな細胞に存在することが確認した。これらの発現の多い臓器は,敗血症病態の進行により細胞死が高まる傾向があり,アポトーシスを起こしやすいことを確認した。これにより結果的には,敗血症の進行によりTLRの発現は各臓器で減少する傾向を示した。 本研究過程では,このようなTLR受容体サブタイプの発現の確認とともに,特に肺におけるTLR4とTLR2の発現の変化に,転写因子nuclear factor-κB(NF-κB)の活性が関与することを見出した。盲腸結紮穿孔による敗血症マウスモデルにおいてNF-κB活性をを選択的に抑制するNF-kBデコイ核酸の投与により,合併する急性肺障害が軽減されることを確認した。TLRの時間変化による空間的発現変化については,特に腎臓の近位尿細管における発現変化が強く,この一因としてmacrophage遊走阻止因子(MIF)の関与を確認した。また,肺においてのTLR4発現の増加にもMIFが関与していることを確認した。
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