研究概要 |
脳虚血モデルおよび脳脂肪塞栓モデルで,脳浮腫の発現およびアストロサイト,水チャネルアクアポリン4(AQP4)およびbasal laminaの経時的変化を検討した。 【方法】:Wistar ratを用いた.麻酔薬はイソフルランを用いた.MCAO群(n=12):モノフィラメント糸による中大脳動脈閉塞を2時間行った.triolein群:右外頚動脈断端から総頚動脈分岐部にカテーテルを留置し、99% triolein 2μLを5分かけて注入.それぞれ2時間(2時間群n=12),24時間(24時間群n=12),72時間(72時間群n=12)観察した.対照群(n=12):生理食塩水2μLを同様に注入し2時間観察した.各群で脳を摘出し(n=7)、左右の皮質・皮質下および小脳の水分量を乾燥重量法で測定した.各群(n=5)でHE染色およびAQP4,GFAP,type IVコラーゲン抗体によるbasal laminaの染色をおこなった. 【結果】:脳水分量はtriolein注入2時間〜72時間で対照およびMCAO群と比べて著明に増加した.2時間群では障害部倍において胞体の膨化及び核濃縮、空胞変性がみられた.時間経過ともに細胞浸潤を伴った壊死性変化を示した。MCAO群では虚血領域で核濃縮を認めた。AQP4の染色性は傷害中心部で低下、周辺部で亢進し、72時間後まで継続した.GFAP染色性は2時間群では傷害部周辺で軽度亢進し,72時間では肥満星状膠細胞やmitosisがみられた。MCAO群ではGFAPに軽度の反応性がみられたが、AQP4染色性に変化はなかった。basal laminaの変化はMCAO群でははっきりしなかったが,triolein群では染色性が弱い傾向がみられた. 【考察】:trioleinによるラット脳脂肪塞栓モデルでは、局所脳虚血モデルに比べて2時間という短時間で著明な脳浮腫が形成され、AQP4の変化も著しいく,basal laminaも傷害される傾向がありvasogenicな因子が関与していると考えられる.脂肪塞栓では早期からAQP4とmatrix metalloproteinaseが病態の形成に関与していると考えられた.
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