研究概要 |
(1)ラット心筋細胞膜およびミトコンドリアATP感受性Kチャネル(KATP)活性をそれぞれパッチクランプ法(Cell-attached法で開口率を測定)および蛍光法(フラボプロテイン自家蛍光測定)により記緑し、ミトコンドリアKATPと細胞膜KATP活性の相互作用を検討した。細胞虚血モデルとしてATP合成阻害剤である2,4-dinitrophenol(DNP)を使用した。[結果]細胞膜およびミトコンドリアの両者ともcontrol群では15分虚血後にKATP活性がbaseline値に比較して先行虚血群で有意に増加した(PC効果)。PC効果はミトコンドリアKATP選択的拮抗薬により消失した(n=16)が,プロテインキナーゼC拮抗薬には影響を受けなかった(n=12)。 (2)ラット平滑筋細胞のKATP活性に及ぼすイソフルランの影響をパッチクランプ法で検討した。パッチクランプ法のCell-attached法で血管平滑筋細胞のK_<ATP>チャネル活性に及ぼすイソフルラン(0.5MAC)の影響を測定した。Cell-attachedの状態でイソフルランを投与すると約5分でチャネルの有意な活性化が認められた。イソフルランによるチャネル活性化は,イソフルランの洗い流し後のwashout効果は認められなかったが,特異的K_<ATP>チャネル拮抗薬であるGlibenclamideにより抑制された。また,イソフルランによるK_<ATP>チャネルの活性化はプロテインキナーゼA(PKA)拮抗薬の前処置により消失した(n=12)。 以上の結果により、K_<ATP>チャネルによる虚血心筋保護作用には細胞膜とミトコンドリアK_<ATP>チャネルの相互作用が重要な役割を果たしていることが示唆された。また,イソフルランはPKAを介して血管平滑筋細胞の細胞膜K_<ATP>チャネルを活性化する可能性が示唆された。
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