研究分担者 |
高橋 成輔 九州大学, 大学院医学研究院, 教授 (30038723)
森田 潔 岡山大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40108171)
津崎 晃一 慶応義塾大学, 医学部, 助教授 (90138107)
瀬尾 憲正 自治医科大学, 麻酔科学・集中治療医学, 教授 (40093257)
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研究概要 |
日本麻酔科学会が実施している麻酔関連偶発症例調査によって,手術に起因する出血が手術室で発生している危機的偶発症の主原因の1つとなっていることが明らかになったことから,手術出血に起因する危機的偶発症例の詳細に関して,無記名の全国アンケート調査を行なった. その結果,(1)出血の予見や回避に関して反省の余地があると考えられる症例が約60%を占めていた,(2)危機的出血に至った原因に関しては癒着・浸潤45%,手術手技44%,麻酔管理35%,血液供給26%(複数選択)という回答が得られ,出血が危機的な状況に至るには患者の術前重症度を含めた複合的な要因が関与していることが示唆された,(3)出血部位は多い順に肝・門脈16%,胸部大動脈15%,骨盤内静脈叢10%,腹部大動脈瘤9%となっていた,(4)急速,大量出血の症例も多いものの,出血量や出血速度はそれ程ではなくても危機的状況が発生している症例が存在していた,(5)交差適合試験が省略された症例は12%,適合赤血球製剤が輸血された症例は2%にとどまり,緊急避難的な輸血体制が整えられていれば危機的な状況を回避できた可能性がある症例も存在することが示唆された. 以上より,出血予測に関するより慎重な術前評価が要求されるとともに,不測の出血にも対応できるような麻酔科医による輸液・輸血管理,さらに救命のための緊急避難的な輸血法を広く普及させることが,手術出血死を削減する方策と考えられた.緊急避難的な輸血に関しては各施設の輸血部はもとより血液センターとの連携も不可欠である.従来の麻酔関連偶発症例調査ならびに今回の調査結果が契機となり,日本麻酔科学会と日本輸血・細胞治療学会は合同で「危機的出血への対応ガイドライン」を作成し2007年4月に公表した.
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