研究概要 |
実際の臨床医療現場では,気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの気道過敏性が亢進した患者で問題となる.そこで,実験動物としてモルモットを用い,異種タンパクのオバラミンを曝露し急性喘息モデルを,そして長期間タバコを曝露することによってCOPDの代表疾患である肺気腫モデルを作製した.この2つのモデルにおいて,1)全肺抵抗(R_L)と動肺コンプライアンス(C_<Dyn>),2)気管リング標本での平滑筋張力と[Ca^<2+>]_i,3)気管平滑筋細胞のVDCC活性,ならびに4)気管平滑筋組織のcyclic AMPレベルを測定することによって,吸入麻酔薬セボフルランの気道平滑筋収縮の抑制効果の差異について研究を行った.今回,モルモットにオバラミンを短期間曝露することにより急性喘息モデルを,またタバコ主流煙に長期間曝露することにより肺気腫様のCOPDモデルを作製することができた.強力な気管支拡張薬でもある吸入麻酔薬セボフルランは,対照群ならびに急性喘息モデル群に対しては,過去の報告と同様,強い気管支拡張作用を示したが,長期タバコ曝露によるCOPDモデルに対しては良好な拡張作用を示さなかった.この現象は,気管平滑筋を取り出したin vitroの研究においても認められ,その張力調節に重要な[Ca^<2+>]_iに対しても抵抗性を示した.[Ca^<2+>]_iの調節に重要なVDCC活性もセボフルランに対して抑制作用が減弱しており,これはリモデリングを起こしている気道平滑筋において同時に起こっている吸入麻酔薬に対するcyclic AMPレベル上昇減弱作用が間接的に作用している可能性が考えられる.
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