研究概要 |
Parkinson病のリスクファクターの一つである除草剤パラコート(PQ)の細胞毒性機構はこれまで小胞体薬物代謝系酵素によるものとされてきたが,我々はこの機構がミトコンドリア(Mt)外膜に局在する新規酵素NADH-quinone oxidoreductase_m(NQO_m)によって引き起こされることを電顕細胞化学的,生化学的に証明してきた。NQO_mはNADHを電子供与体としてPQを還元してラジカルを生成し,Mtを障害して細胞死へ至らしめる。本研究ではNQO_mの本態を明らかにするため,その構成タンパク質成分を解析した。 ラット肝臓より単離したMtのNQO_m活性を蛍光法によって測定すると,PQとNADHの同時投与によって活性が検出された。この反応はMt外膜にあるvoltage-dependent anion channel(VDAC)の阻害剤4,4'-diisothiocyanatostilbene-2,29-disulfic acid(DIDS), N,N'-dicyclohexylcarbodiimide(DCCD),および抗VDAC抗体によって抑制された。また,PQとNADHを同時に投与するとMtの膨潤と破壊が形態学的に観察されるが,これらは抗VDAC抗体処理により抑制された。 次にMt外膜より調製したNQO_mの酵素活性をnitroblue tetrazorium(NBT)還元法によって測定したところ,単離Mtと同様にDIDS,DCCDおよび抗VDAC抗体で抑制された。また,抗VDAC抗体による免疫沈降でVDACを減少させると,その活性は抑制された。 さらにNQO_mをnative-ポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)し,NBT法によるzymographyを行ったところ,分子量500kDaに活性が現れた。このバンドをSDS-PAGEにかけたところ,複数の蛋白バンドが検出された。抗VDAC抗体でWestern blotしたところ,抗体に反応する蛋白質が含まれていた。 以上の結果より,NQO_m蛋白複合体にはVDACが含まれていることが明らかとなった。
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