研究概要 |
前立腺癌細胞(LNCaP, DU-145, DU-145/AR)と正常前立腺細胞(PrEC, PrSC)におけるVIPレセプターの発現をRT-PCRで調べたところ、癌細胞ではLNCaPとDu-145/AR細胞において、3種類のサブタイプ(VPAC1, VPAC2, PAC1)がいずれも発現していたのに対し、DU-145細胞ではPAC1のみが発現していた。正常前立腺細胞ではPrEC(前立腺上皮細胞)では3種類のサブタイプがいずれも発現していたが、PrSC(前立腺間質細胞)ではVPAC2とPAC1は発現していたが、VPAC1は発現していなかった。 VIPの前立腺癌細胞株の浸潤能への影響をトランスウエルチャンバーを用いて検討を行った。VIPはDU-145/ARとLNCaP細胞の浸潤能を亢進させたが、DU-145とLNCaP細胞には影響を与えなかった。またVIPはDU-145/ARとLNCaP細胞の運動能を有意に亢進させた。各種濃度のVIPを作用させたDU-145/AR細胞の培養上清中のMMP-9(matrix metalloproteinase)とu-PA(urokinase-type plasminogen activator)の産生をそれぞれgelatine及びfibrin zymographyにて調べた。その結果、それらの酵素の産生には影響を与えなかった。また細胞外マトリックス成分のフィブロネクチンやラミニンに対する接着実験を行ったが、VIPはDU-145/AR細胞の接着にも影響を与えなかった。 VIP及びPACAPをそれぞれ作用させた前立腺癌細胞と正常前立腺細胞の培養上清中のIL-6をELISAにて測定を行った。それらの神経ペプチドはDU-145/ARとPrEC(前立腺上皮細胞)のIL-6を増加させた。しかしながらLNCaP、DU-145細胞及びPrSC(前立腺間質細胞)のIL-6には影響を与えなかった。DU-145/ARの培養上清中のIL-6を亢進させたVIPについて、IL-6プロモーターへの影響についてルシフェラーゼアッセイを用いて検討を行った。10^<-6>Mの濃度のVIPはDU-145/ARのIL-6プロモーター活性を亢進させた。各種濃度のVIPを作用させたDU-145/ARの培養上清中のIL-1βとTNF-αをELISAにて測定したところ、VIPはそれらのサイトカイン産生には影響をほとんど与えなかった。
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