研究概要 |
Na, K-ATPase阻害剤であるウアバインによる各種培養細胞株、正常近位尿細管細胞に対する増殖抑制、細胞傷害作用、また腎癌組織におけるNa, K-ATPaseの発現を検討することによりジギタリスの抗癌治療応用への可能性を検討することを目的とした。 前立腺癌、腎細胞癌培養細胞に対するウアバインの効果をアラマーブルー染色による色素還元法により測定した。10〜200nM範囲で増殖し抑制効果が認められたことが確認され、ウアバイン暴露により各種細胞がアポトーシスを起こしていることがTUNEL法により確認できた。しかし、各濃度間でのアポトーシス細胞の比率に相関は認められなかった。次に近位尿細管細胞に対する効果を検討知るため腎癌摘出組織よりprimary cultureを行った。正常近位尿管細胞としてTMUK-01,-02,-03,-04,-05,-06,-07の7系,癌細胞としてTMUR-04,-05,-06,-07の4系のprimary cultureに成功した.近位尿細管細胞であることの確認は,megalin, cubilin mRNAの発現をRT-PCR法により行い、正常近位尿細管ではmegalin, cubilinともすべてに、癌細胞ではmegalinは一部の細胞のみで発現、cubilinの発現は認められなかった。近位尿細管凍結保存細胞によりBrdU標識による細胞増殖能の検討を行ったが増殖が弱く評価不能であった。現在新たな手術検体より初代培養を行っている。パラフィン組織を用いたNa, K-ATPaseに関する検討では、パラフィン材料,抗体などの問題が原因で染色が微弱であり,凍結組織などを用いて検討すべきであることが判明、現在検体集積中である。心不全患者などでのジギタリス使用濃度とほぼ同程度で癌細胞において増殖抑制が示されることが判明したが、10%程度と弱く他剤との併用が必要であると考えられた。
|