研究概要 |
目的:多様な形質により構成されているT1〜T3N0M0病期の日本人前立腺癌を対象とし,FISH法によるc-myc癌遺伝子異常の検出が日本人においても有用な臨床的指標となりうるか否かを検討した。 結果:1.c-myc遺伝子異常と病理組織学的分化度およびGleason's scoreとの関係:AI-c-mycと病理組織学的分化度には有意な関連が観察された(P=0.03)。同様にGleason's scoreの悪化とともにAI-c-mycの有意な増加(P<0.01)が観察された。2.c-myc遺伝子異常と臨床的再発率の関係:c-myc遺伝子異常が明らかでない癌組織例では5年非再発率87.5%,Simple gainでは52.1%,AI-c-myc例では29.0%であり臨床的再発率に有意差が観察された(P=0.011)。3.c-myc遺伝子異常と疾患特定生存率との関係:c-myc遺伝子異常が明らかでない癌組織例では5年疾患特定生存率100%,Simple gain例では66.7%,AI-c-myc例では24.3%であり疾患特定生存率に有意差が観察された(P=0.002)。まとめ:c-myc遺伝子の増幅は病理組織学的分化度やGleason's scoreと有意な関連がある。c-myc遺伝子の増幅は厳重な経過観察を必要とする症例の特定と追加治療の選択において有用な指標となり得ると考えた。
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