研究概要 |
卵・顆粒膜細胞からの相互のシグナリングの解析による卵胞発育機構の解明、ならびに、ヒト未熟卵胞の凍結保存、マイクロカプセルによる凍結融解後の体外培養系の確立を最終目的として基礎的検討を行い以下の成果が得られた。 1)ガラス化液として10%EG含有PBS液で10分間前処理後、15%EG+15%DMSO+0.5M sucrose含有PBSに浸積しクライオトップを用いた急速凍結法により、ヒト卵子では約90%の融解後の生存率を認めた。各マイクロカプセルを用いたin vitroでの培養実験では卵胞組織の生存を認めたが生存率は低値であり、ステロイド産生も確認できなかった。ヒト卵子におけるGDF-9,CD9,CD98,C-kit mRNAの発現をPCR法で確認した。 2)初期卵胞発育に関与する因子としてHB-EGFに着目し、ラットを用い卵胞、黄体におけるHB-EGFおよび受容体の発現、局在に関し検討した結果、HB-EGFは初期卵胞のリクルートなど卵胞発育および黄体機能に関与する可能性が明らかとなった。 3)凍結融解後の卵子の受精能低下に関し、卵細胞膜と精子の相互作用の観点から卵細胞膜のインテグリンに関し検討した結果、卵細胞膜のインテグリンは精子の結合・融合には必須でないことを明らかにした。 4)受精に関する基礎的研究として、ヒト精子形成に関与する遺伝子を解析した結果、OPPO1,TISP50,15,43遺伝子、MEI1遺伝子がヒト精子形成に関与する可能性を示唆した。 5)体外培養系ではさけられないin vitro加齢の卵子に及ぼす影響に関する検討では、in vitro加齢は活性化後の核の進行を促進することを明らかにした。 以上の成績から初期の目的の基礎的部分は達成されたと考えるが、今後マイクロカプセルの改良、体内および体外培養環境に影響を及ぼす諸因子の解析など、さらなる検討の必要性が示された。
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