研究概要 |
臨床験審査委員会の承認を得た上で、全身合併症、感染症等の無い妊婦よりインフォームド・コンセントを得て、満期の予定帝王切開において卵膜を採取し本研究に用いた。トリプシン処理により羊膜上皮細胞を得て初代培養を行いグラム陰性菌菌体成分のLPSと炎症性サイトカインTNF-αはこの細胞からのアクチビンA分泌を促進することを確認したが、BrdU incorporationを指標とした細胞増殖測定では増殖抑制作用を示した。網羅的検索法を確立する目的で、この培養細胞に2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxinを添加し、添加群と対照群の遺伝子発現の相違をDNAマイクロアレイとquantitative real-time PCRにより解析し、種々の細胞で2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxinにより発現が誘導されることの知られているCYP1A1とCYP1B1が羊膜上皮細胞でも誘導されることを明らかにし、この系は網羅的検索に適する系と考えた。また、2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxinはインターフェロン誘導性遺伝子の発現を強く誘導したが、それと共にコラーゲンの産生や代謝に関与する遺伝子であるITGA10、ITGA2、MMP9の発現を羊膜上皮細胞で増加させることを初めて明らかにした。卵膜の強度の維持を担っているのは羊膜のコラーゲンであるがdioxinに曝露された妊婦では早産が高率であったことが報告されており、この系は絨毛膜羊膜炎における病態の網羅的検索に有用であることを示した。更に、上皮細胞除去後の羊膜より間葉細胞を得て培養し、羊膜間葉細胞からのアクチビンA分泌もTNF-αにより促進されること、アクチビンはこの細胞のコラーゲン産生に関与していることを明らかにした。
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