研究課題/領域番号 |
15591731
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
産婦人科学
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢野 哲 東京大学, 医学部附属病院, 助教授 (90251264)
|
研究分担者 |
中川 俊介 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (70270874)
|
研究期間 (年度) |
2003 – 2005
|
研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
|
配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2005年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2004年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2003年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
|
キーワード | GnRHアナログ / GnRHアンタゴニスト / GnRH II / 卵巣 / 子宮内膜癌 / 子宮内膜症 / アポトーシス / 細胞周期 / 顆粒膜細胞 / フローサイトメトリー / HEC-1 |
研究概要 |
本研究では、まずGnRHアナログの抗腫瘍効果の作用メカニズムを分子・細胞レベルで検討した。さらに、GnRHアナログが卵胞発育・閉鎖機構に及ぼす影響とその作用メカニズムを、顆粒膜細胞におけるアポトーシス・細胞周期制御の面から解析した。GnRHIアンタゴニストのCetrorelixはヒト子宮内膜癌細胞株HEC-1Aに対して直接的抗腫瘍効果を有するが、このメカニズムとして、癌抑制蛋白p53の活性を増強し細胞周期制御因子cdc2を不活化することにより細胞周期のG2期停止を誘導することを明らかにした。GnRH IIも同様にHEC-1A細胞株に対して直接的抗腫瘍効果を有することを明らかにした。また、GnRH IIは子宮内膜症性卵巣嚢胞の間質細胞に対してその細胞増殖および向炎症因子発現を抑制するが、子宮内膜症患者の局所での発現レベルは正常者子宮内膜より低いことから、GnRH IIによる局所での自己制御機構の破綻が子宮内膜症の発症・進展に影響を与える可能性を示した。ラット卵巣顆粒膜細胞において、Fas/FasリガンドシステムはCaspase系を介してアポトーシスを誘導しiNOSの発現を抑制する一方、NO情報伝達系はCaspaseの発現を抑制してFas/Fasリガンドシステムによるアポトーシスを阻止することを明らかにした。すなわち、卵胞閉鎖過程においてFas/FasリガンドシステムとNO情報伝達系との間にクロストークの存在することを明らかにした。このメカニズムは、婦人科腫瘍細胞においても同様に存在する可能性がある。GnRH IアンタゴニストのCetrorelixのラット顆粒膜細胞に対する直接効果を検討したところ、比較的高濃度(10^<-7>〜10^<-5>M)のCetrorelixは、成熟顆粒膜細胞の増殖を直接的に抑制した。この直接的増殖抑制効果は、G2期停止およびアポトーシス誘導によるものであった。G2期停止は、cyclin B1レベルの低下と、リン酸化cdc2およびp53レベルの上昇によるものと考えられた。一方、比較的低濃度(10^<-9>〜10^<-8>M)のCetrorelixは、成熟顆粒膜細胞の増殖を直接的に抑制しなかった。また、Cetrorelixは未熟顆粒膜細胞の増殖に影響を与えなかった。すなわち、比較的高濃度のCetrorelixが使用される癌治療においては、顆粒膜細胞の細胞周期停止とアポトーシスを介して成熟卵胞の閉鎖が誘導されるが、比較的低濃度のCetrorelixが使用されるIVF-ETプログラムにおいては、成熟卵胞の閉鎖は誘導されないこと、未熟卵胞は、癌治療およびIVF-ETプログラムのいずれにおいてもCetrorelixの影響を受けないことが示された。この一因として、未熟顆粒膜細胞のGnRH受容体のレベルが低いことが考えられた。
|