研究概要 |
最近,標的遺伝子の発現を阻害する方法としてRNA interference (RNAi)が発見され,哺乳動物細胞での遺伝子発現抑制の成功が報告された。我々はRNAiが子宮頸癌遺伝子標的治療の戦略として応用可能か否かを探るため,HPV16型陽性子宮頚癌細胞株SiHaを材料にE6およびE7を標的としたRNAiを行い,これら癌遺伝子の発現とその生物学的効果を解析した。E6/E7 mRNAに相補的な21塩基二重短鎖RNA (siRNA)を合成し、SiHa細胞に導入した。72時間後、E6 siRNAはE6/E7 mRNAレベルをそれぞれ30%および40%に,E7 siRNは88%および20%にまで抑制した。これらのE6およびE7 siRNAはSiHa細胞の足場依存性増殖をそれぞれ29%および66%に,足場非依存性増殖を18%および87%に抑制した。E6 siRNによる増殖抑制は,p53の増加とp21の発現誘導,さらにはRbの低リン酸化を伴っていたが,E7 siRNAはこの効果をまったく示さなかった。また,E6 siRNAはNOD/SCIDマウスにおけるSiHa細胞の造腫瘍性を著明に抑制した。以上から,RNAiは、HPV陽性子宮頚癌に対する新たな治療戦略として期待しうると考えられた。
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