研究概要 |
【目的】黄体の形成には、適切な血管網の構築が必要であるが、これには、血管新生のほかに血管の質的な変化、すなわち血管の成熟も重要である。そこで、ラットを用い、黄体内血管の成熟過程とその調節機構を検討した。 【方法】(1)ラットの妊娠3,7,9,12,15,21日目の黄体内の血管の成熟過程を血管漏出性の変化により評価した。血管漏出性はEvans Blue(EB)を静注後、摘出した黄体より抽出したEB量を黄体の血管数で除したものとした。(2)血管の成熟におけるAngiopoietin-1(Ang-1)とAng-2の関与を検討した。(3)黄体期中期における黄体内の血管成熟、Ang-1,Ang-2の発現におけるestrogenの関与を検討した。 【成績】(1)黄体内血管の漏出性は黄体期の初期に高値を示したが、中期に向かい低下し、退縮期には増加した。すなわち、黄体内の血管は黄体の発育と共に成熟し、退縮期には再び脆弱化することが明らかとなった。(2)免疫組織染色で両者とも黄体細胞に発現がみられ、特に、Ang-1は黄体期中期に強く発現していた。Ang-1 mRNA発現は、初期から中期にかけて増加したが、後期には低下した。一方、Ang-2 mRNA発現には、有意の変化はなかった。Western blot解析によるタンパクレベルの発現も、mRNA発現と同様であった。(3)妊娠12日目に下垂体・子宮摘出を行い、その後15日目までestradiolを投与した。下垂体・子宮摘出によりAng-1は低下し血管漏出性は増加したが、この変化はestradiolの投与により完全に阻止された。 【結論】黄体の発育に伴い、黄体内の血管は機能的に成熟し安定するが、退縮期には脆弱化することが明らかとなり、この過程にはAngiopoietin系が関与することが示唆された。特に、黄体期中期の血管の安定性はestradiolによるAngiopoietinを介した調節が明らかとなった。本研究により、黄体の発育や機能維持には、血管の安定性が関与することが考えられた。
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