研究概要 |
中枢神経系の老化に特異性の高い老化促進マウス(SAMP8)および同系対象マウス(SAMR1)の脳組織を用い、メラトニンと生体老化との関連をFree radical-scavenger系を指標に検討し、以下の成績を得た。 1.脳組織中の脂質過酸化物(thiobarbituric acid reactive substances,TBARS)、蛋白酸化物(protein carbonyl)、DNAの酸化物(8-hydroxydeoxyguanosine,8-OHdG)濃度は加齢と伴に増量し、その増加はSAMP8に早期より認められた。 2.脳組織中の抗酸化酵素であるglutathione peroxidase活性は加齢と伴に減少し、その低下はSAMP8が著明であった。一方、superoxide disumutase活性の低下は軽度にとどまった。 3.夜間の血中メラトニン濃度は加齢と伴に減少し、とくに8ヶ月以降に著明な低下がみられた。7ヶ月齢よりメラトニンを2、20μg/mlに調整した水を連続投与した群の12ヶ月齢の脳組織中の各parametersは以下のとおりであった。 4.加齢に伴うTBARS,protein carbonyl,8-OHdGの増量は有意に抑制された。 5.加齢に伴うGlutathione peroxidaseの低下は有意に抑制されたが、superoxide dismutase活性には影響がみられなかった。 今回の検討から、老化促進マウスの中枢組織ではフリーラジカル優位の生体環境がより早期に醸成され、生体老化にメラトニンの産生低下が密接に関与していることが示唆された。また、生体老化に対する抗酸化薬としてのメラトニンの薬理学的作用が明らかとなった。
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