研究概要 |
一口に頭頸部癌といっても、各部位の癌でその臨床態度が大きく異なることは、日常の診療でしばしば経験し、疑問に思う点である。そこでLOH(loss of heterozygosity)が頭頸部癌の部位で特異的な頻度分布をしていないかどうかを検証した。特に頭頸部扁平上皮癌の癌化の過程で高頻度に変異が認められる3p,9p,17pの3ケ所のLOHを中心に検討した。頭頸部癌302例を対象とした結果、informative caseで3p21,9p21,17p13のLOHがそれぞれ54.5%,57.4% and 57.1%に認められた。この結果を部位別に比較すると口腔癌ではLOHの頻度が低く、下咽頭癌で極めて高い傾向があり、有意差が認められた。このことから同じ頭頸部扁平上皮癌ではあっても、中咽頭を境にして、その癌化の過程が大きく異なっている可能性が示唆された。(Shiga, K. et al. Tohoku J Exp Med.)また患者の予後との関係をKaplan-Meier法を用いて検討するとLOH陽性例で予後が有意に悪い傾向を認めた。(Shiga, K. et al., submitted) さらに癌化におけるepigeneticな変異を探るため、頭頸部扁平上皮癌の癌化の過程の早い段階で変異が見られるとされる3p21近傍に存在する腫瘍抑制遺伝子RASSF1Aのプロモーター領域のメチル化について検討した。これまでの検討では頭頸部扁平上皮癌のほほ90%にメチル化が認められ、頭頸部扁平上皮癌の癌化に密接に関与している可能性が考えられた。
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