研究概要 |
1.慢性低酸素による頸動脈小体内神経ペプチドの変化に及ぼす炭酸ガス濃度の影響 NPY陽性線維はHypercapnic hypoxiaにおいて他の条件と比較し40%増加した。VIP陽性線維はIsocapnicおよびHypocapnic hypoxiaにおいてコントロールに比較し80%増加した。 以上の結果から、慢性低酸素による頸動脈小体の血管膨張はVIPによること、Hypercapnic hypoxiaでの血管膨張の抑制はNPYによることが示唆させた。(Adv.Exp.Med.Biol.536:611-617,2003) 2.慢性低酸素暴露後、正常大気環境下での経時的な頸動脈小体の形態変化の検討 ラットを低酸素(hypocapnic hypoxia)に8週間暴露した後、正常大気環境に戻し、1,2,4,8週間後の頸動脈小体の形態と神経ペプチドの分布の変化を観察した。 (1)頸動脈小体の形態的変化 低酸素暴露により肥大した頚動脈小体は、正常環境下に戻した1週後から縮小し始め、4週後には低酸素暴露前とほぼ等しい大きさになった。 低酸素暴露による肥大と、正常環境に戻すことによる縮小は、頸動脈小体内の血管の拡張と収縮に因っていた。 (2)頸動脈小体内の神経ペプチドの変化 低酸素暴露後、正常環境に戻した1週後にNPY陽性線維は著明に増加し、VIP陽性繊維は有意に減少した。 低酸素暴露後、正常環境に戻した4週後にSPおよびCGRP陽性繊維はわずかに増加した。 低酸素暴露後、正常環境に戻した8週後には、SP,CGRP,VIP,NPY陽性線維の分布は、低酸素暴露前の分布とほぼ等しい状態に回復した。 以上の結果から、頸動脈小体の大気中酸素濃度による形態的変化に、神経ペプチドが関係していると考えられた。(Histol.Histopathol.19:1133-1140,2004) 3.In situ hybridization法による検討 知覚および自律神経節内における低酸素暴露による神経ペプチドの転写の変化を、in situ hybridization法を用いて観察した。 三叉神経節内ではSP-およびCGRP-mRNAが低酸素暴露によって変化した。現在固体数を増やして、有意差を検討している。
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