研究概要 |
ニワトリ胚網膜色素上皮細胞の特異的な遺伝子として単離されたpP344遺伝子は、分化、形質転換に深く関わり、セリンプロテアーゼインヒビター類似配列を有する。pP344タンパク質の網膜分化に対する機能を解明するために、発現用ベクターpcDNA4/TO/myc-HisにpP344cDNAを組み、pP344-His融合タンパク質を発現させた。ウェスタンブロット法により、68kDaのpP344-His融合タンパク質の発現が認められた。ニワトリ5日目胚網膜を単離し、10%FCS入りMedium199で、90000個/cm^2の密度となるように細胞を播種して、37℃,5%CO_2で培養した。pPP344-His融合タンパク質(0,2,10,50ng/ml)入りの1%FCS Medium199にかえて培養し、免疫組織染色を施行した。pP344融合タンパク質2ng/ml、10ng/ml、50ng/mlを添加すると、神経細胞突起の平均長が47.6±13.0μm、60.0±10.0μm、75.9±25.3μmとコントロールの27.1±9.2μmと比較して、濃度依存性に伸長した(P<0.0001,P=0.017,P=0.002)。オプシン陽性細胞数は、pP344融合タンパク質を添加するとコントロールと比較して有意に多かった(P<0.0001。GABA陽性細胞数は、pP344融合タンパク質を添加するとコントロールと比較して有意に多かった(P=0.01)。pP344タンパク質は、培養ニワトリ胚網膜細胞の分化を促すことが示唆された。今後さらにpP344遺伝子産物の網膜における機能の解明が重要と考えられた。
|