研究概要 |
多くの内因性ぶどう膜炎については原因が解明されないままである。一部のぶどう膜炎はウイルス感染が関与していることが判明しているが、ぶどう膜炎の発症にはウイルス感染という外的因子だけでなく、宿主側の要因が強く関与していると推測される。宿主側の要因として外来性物質や刺激に対する遺伝的個体差がぶどう膜炎の発症に関与するという仮説をたて、ぶどう膜炎191例(Vogt-小柳-原田病51例、ベーチェット病78例、HTLV-1関連ぶどう膜炎62例)とコントロール78例のリンパ球からDNAを抽出し、PCR-restriction fragment length polymorphism法でendothelial nitric oxide synthase(eNOS)、manganese superoxide dismutase(MnSOD、extracellular superoxide dismutase(EC-SOD)、intercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)、tumor necrosis factor-α(TNF-α)、TNF receptor、lymphotoxin-α(LT-α)の遺伝子多型を調べた。eNOS、EC-SOD、ICAM-1の遺伝子多型の頻度は、いずれのぶどう膜炎もコントロールと同様の頻度であった。MnSODはベーチェット病でVal/Val遺伝子型とallele Valの頻度がコントロールと比べて有意に高く(p=0.00005)、HAUでallele Valの頻度が有意に高かった(p=0.05)。遺伝子多型の頻度に有意差のみられたMnSODについて、血清中のMnSODをELISAで測定した結果、Vogt-小柳-原田病18.1±3.5ng/ml、ベーチェット病22.3±4.8ng/ml、HTLV-1関連ぶどう膜炎20.4±6.3ng/mlで、ベーチェット病で有意に高かったが、MnSODの遺伝子多型による差はみられなかった。TNF-αの多型では、-863A allele頻度がベーチェット病で有意に高く(p=0.05)、-1031,-308,-238,TNF receptorの遺伝子型およびallele頻度はいずれのぶどう膜炎でもコントロールと有意な相違はなかった。LT-αはベーチェット病で遺伝子型頻度に有意差がみられ(p=0.0024)、またA allele頻度が有意に高かった(p=0.0007)。本研究により、MnSOD、TNF-α-863とLT-αの遺伝子多型はベーチェット病の発症と関連があることが示唆された。
|