研究概要 |
Microsurgical techniqueを用いて,マウス小腸移植を行った. ドナー小腸は麻酔下に開腹後,大動脈より冷乳酸化リンゲル液にて灌流.空回腸を上腸間膜動脈と門脈本管を付けて摘出.レシピエントに吻合するまで,氷上の冷乳酸化リンゲル液にて保存.レシピエントを開腹後,グラフトの大動脈と門脈をレシピエントの大動脈と下大静脈に端側にて血管吻合.腸管はグラフト空腸側をストーマとして体外に固定し,回腸側はレシピエント空腸と端側吻合し,小腸移植を行った.急性拒絶反応モデルとして,MHC完全不適合間(C57BL/6,H-2^bからBALB/c,H-2^d)の小腸移植を行い,術後7日目にマウスを犠牲死させ,移植臓器(小腸)を摘出し,HE染色による急性拒絶反応の判定を行った.その結果,著明な細胞浸潤,さらには組織構築の破壊を観察した.Real-time PCRの結果,VEGF, VEGF receptorの発現の上昇を認め,拒絶反応とVEGF及びその受容体の関与が示唆された. さらにメカニズムの詳細を検討するとともに,抗flk-1モノクロナール抗体(DC101),抗flt-1モノクロナール抗体(MF-1)の投与を行い,それぞれの拒絶反応抑制効果を検討した.その結果,各抗体単独投与では有意な免疫抑制効果は認めなかったのに対し,併用投与群では,有意な生着延長効果を認めた.これらの抑制効果は,グラフト臓器局所でのサイトカインやケモカインの発現の低下と関連しており,局所の免疫活性の抑制がアロ免疫応答に関連しているものと考えられた.さらに,本研究を発展させ,虚血再灌流障害におけるVEGFおよび受容体の機能を検討した結果,虚血再灌流障害においてもそれらが有意な関与を示す事が明らかとなった.すなわち,局所において障害の発生にVEGFが関与しており,受容体の阻害によってそれらが抑制し得る事が判明した.
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