研究概要 |
神経堤細胞は、マウスでは胎生9日頃神経管癒合部より発生する細胞集団である。特に頭部から派生する神経堤細胞は、骨芽細胞、軟骨細胞、象牙芽細胞等の様々な細胞に分化できることが知られている。頭部に由来する神経堤細胞は、マウスの発生において顎、歯等の頭蓋顔面のみならず胸腺等の器官形成にも関与しているが、これらの神経堤細胞がどのような性質を持つかについてはほとんど知られていない。そこで、歯や胸腺の形成に関与する神経堤細胞の存在時期、部位、分化能について検討した。さらに、神経堤細胞の象牙芽細胞への分化を簡単に検出する系の確立を目指した。 本年度の研究成果として、 1)神経堤細胞を特異的に標識できるマウスを用いて、胸腺の器官形成に関与する神経堤細胞がいつ、どこに存在するかを明らかにした。また、胸腺に神経細胞や色素細胞に分化できる神経堤細胞が存在することを明らかにした。さらに、胸腺の器官形成に関与する神経堤細胞の性質を明らかにするために、フローサイトメーターを用いて表面分子の解析を行った。 2)歯髄及び歯胚に存在する神経堤細胞由来細胞の性質解析:神経堤細胞を特異的に標識することのできるマウスを用いて、歯胚間葉の約70%が神経堤細胞に由来する細胞で、それらの大部分はPDGFRα,integrin α4,CD44,integrin β1等の分子を発現していることを明らかにした。 3)歯髄及び歯胚に存在する神経堤由来細胞が、歯の象牙芽細胞のみならず、骨や軟骨に分化できる可能性が示唆された。 4)象牙芽細胞に特異的に蛍光蛋白GFPを発現するdentin sialophosphoprotein (DSPP)-GFPマウスの作製を計画し、計3系統の遺伝子導入マウスを作製したが、安定に象牙芽細胞にGFPを発現するマウスは得られなかった。 これらの骨や軟骨に分化できる細胞が、多分化能を持つ細胞に由来するか、骨あるいは軟骨のそれぞれに分化できる細胞に由来するかについてさらに検討する予定である。
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