研究概要 |
1 In situ hybridization法により,TCDD投与によってラット視床下部のH3受容体mRNA発現が減少し,線条体において増加していることを見出した。 2 In situ hybridization probeの作製中,新規H3受容体isoformを同定した。解析の結果,このvariantは以下の特徴を持つ事が確認された。 (1)H3Lとして報告されている野生型variantの第3細胞外ループの前半部分から第3細胞内ループのぼぼ半分まで,全長342base(114アミノ酸)を欠失する。 (2)この変異はin-flame mutationであり,ヒスタミンH3受容体遺伝子の第3exon内で発生している。 3 H3受容体isoformのmRNA発現に,摂食量の少ない方が機能的H3受容体mRNA発現が多いという性差および系統差を見出した。 4 H3受容体mRNA発現量変化と摂食量の関連を明確にするために,短期的および長期的に摂食量変化をもたらすモデル(短期:絶食-再摂食,長期:卵巣摘出)でH3受容体mRNAの発現量を検討したところ,短期的摂食量変化ではH3受容体mRNA発現量変化を伴うが,長期的摂食量変化ではH3受容体mRNA発現量変化を伴わないことが示された。 5 絶食によるH3受容体mRNAの発現変化がどのような内部要因で惹起しうるのかを確認するために、絶食時に誘導されることが報告されているケトン体による発現変動を検討したところ,"βヒドロキシ酪酸投与群"の視床下部におけるH3受容体(総H3受容体およびH3L受容体)mRNA量は,生食投与群と比べ有意に減少した。 以上の検討から,ヒスタミンH3受容体の発現変化は,短期的摂食変化と密接に関連しており,TCDDは視床下部でのH3受容体発現を減少させることにより摂食抑制を惹起する可能性が示唆された。
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