研究概要 |
マウス骨芽細胞の分化におけるカスパーゼの新規な役割に関して 骨分化誘導因子であるBone morphogenetic protein(BMP)4はマウス骨芽細胞様細胞MC3T3-E1においてcaspaseの活性化を誘導し、ジグナルカスケードの存在を確認した。MC3T3-E1はBMP-4によりALP活性化、PTH response(cAMPの増加),G0/G1 arrestなど分化マーカーを変動させるが、これらはcaspase inhibitor前処理により統計的有意に抑制された。本研究は、アポトーシス共通シグナルと考えられるカスパーゼの新規な生理的意義として、BMPによる骨芽細胞の分化にcaspase系は関与することを初めて明らかにした、(Journal of Biological Chemistry, 278(48), 47477-47482, 2003)。 歯周病の発症あるいは病態進行におけるRANKL/OPGの役割に関して ヒト歯肉溝滲出液gingival crevicular fluid(GCF)中のTNF-α受容体ファミリー(破骨細胞分化抑制因子のosteoprotegerin(OPG)と破骨細胞分化誘導因子RANKL)は歯周病の進行・ステージとともに変動が見られ、統計的有意なRANKLの亢進と、それとは逆相関にOPGの減少を認め、特にRANKL/OPG ratioは歯周病患者においては顕著な亢進が認められた。本研究は、ヒト歯周病に伴う骨破壊にRANKL/OPGが深く関与する可能性を初めて明示し、骨破壊疾患の原因あるいは病態進行の一助としてRANKL/OPGのバランスが崩れることで異常なosteoclastogenesisの亢進が局所的に起こり、骨吸収を惹起させるという仮説を提示した(Journal of Dental Research, 83(2), 166-169, 2004.)。 骨芽細胞病態モデルを用いた血清除去誘導シグナルカスケードの解明 骨芽細胞は炎症性サイトカイン処理によりNFκBの活性化を伴うアポトーシス細胞死を示すこと、骨芽細胞が骨細胞に分化する過程で、骨基質に囲まれることで栄養供給が絶たれ、大半の細胞がアポトーシスを起こすことが、既報から明らかになっている。本研究は、マウス骨芽細胞様細胞MC3T3-E1は、血清除去により24時間までに細胞増殖は停止し、細胞周期G0/G1 arrestを伴うアポトーシス細胞死が惹起されることを確認した。さらにその際,20S proteasomeからNFκBの活性化、cycline-dependen kinase(cdk)-6の減少、caspase-8,-2,-3,-9の活性化に至る高度に制御されたシグナルカスケードの存在を明らかにした(Bone 35(2), 507-516, 2004)。各種酵素阻害剤を用いた検索から、20S proteasomeの下流においてNFκB/細胞周期G0/G1 arrestに至る経路と、NFκB/caspase/apoptosisへ至るふたつの独立したシグナルカスケードの存在を明示した。本研究は、骨芽細胞の細胞周期G0/G1 arrestならびにアポトーシス細胞死を導くシグナルカスケードを調節する重要な生体内因子として、NFκBの新規な生理的意義を明らかにした(Bone, 35(2)、507-516, 2004)。
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