研究概要 |
顔面非対称の主観的評価と正面セファロ写真における計測指標との関係を解析した.矯正科を受診した100名の患者を連続的に抽出し,その正面写真を10名の歯科矯正科医が観察して,3つのカテゴリーに分類した.(1)顔面は対称である.(2)顔面は非対称であるが治療を必要とするほどではない.(3)治療が必要な非対称である.各カテゴリーの特徴を抽出するために8名以上の評価が一致した症例40例について,セファロ正面写真上で各指標の計測をおこなった.その結果,Me, Maxillo-mandibular midline angle, L1などの下顎の指標が主観的評価と関連していることがわかった.またpostural symmetry angleは主観的評価と一致せず,骨格の非対称と主観的評価が関連しない症例があることがわかった.これには咬筋などの軟組織が関連していると推測された. 次に矯正科医が患者の顔面非対称の治療を必要とするか否かを主観的に識別するための,セファロ指標の閾値をもとめた.上記100名の患者を,グループA,顔面対称的あるいは臨床的に受け入れられる非対称であり治療を必要としない群,グループB,著明な非対称で治療を必要とする群の2グループに分類した.セファロ正面写真上で各指標を分析し,各々の矯正科医における判別分析をおこなった.指標の中では,Meの正中からの距離あるいはMaxillo-mandibular midline angleがすべての観察者において高い精度を示し,顔面非対称の主観的評価の最も適切な指標である可能性が示唆された.Meの距離の判別点は,最大で4.9mm,最小で3.4mmであった.また,Maxillo-mandibular midline angleの判別点は,最大で5.1°,最小で3.4°であった.本研究で決められた閾値は矯正治療計画や評価に寄与するものと考えられた.
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