研究概要 |
歯髄診断は電気診あるいは温度診といった患者の主観的な反応により診査を行い、術者の経験に依存度の高い診断法である。また、biopsyは不可能である。従って、診査における客観性、非侵襲性の確立が求められている。そこで光線力学的診断法を歯髄診断に応用する目的で以下の実験を行った。 臨床診断において健康あるいは慢性歯髄炎、急性歯髄炎と診断されたヒト歯髄を凍結、薄切した。共焦点レーザー顕微鏡(LSM5 PASCAL, Zeiss)を用い、その凍結切片のautofluorescenceを観察した。excitation/detectionの組み合わせは488:543/505-530:560,543/560-615,488:543/505-530:560,633/650とした。歯髄のautoflorescenceはコンピューター上でソフトウエア(LSM5 PASCAL, Zeiss)を用いて画像として保存した。切片はその後、ヘマトキシリンエオジン染色し、歯髄の病態を観察した。autofluorescnceは得られた画像をソフトウエア(Win Roof, Mitani)を用いて数値化を行った。 病理組織診断によると、臨床診断において健康歯髄と診断された標本では、歯髄細胞が観察された。臨床診断で慢性歯髄炎、急性歯髄炎と診断された標本では歯髄細胞の減少、好中球浸潤が観察された。 autofluorescence値については全てのexcitation/detectionの組み合わせで観察された。単独のexcitation/detectionのautofluorescence値では臨床診断における健康歯髄、慢性歯髄炎、急性歯髄炎間で有意差は認められなかった。 本研究により、歯髄からのautofluorescenceの検出が可能であることが判明した。今後、励起波長と検出波長の組み合わせを変えること、あるいはその組み合わせをいくつか用いることにより、歯髄の病態の変化を検出できる可能性が示唆された。
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