研究概要 |
Bioactive glass(以下BAG)を,1.新鮮露髄面に,2.根管貼薬剤として根尖孔付近に,3.髄床底穿孔部に,使用した場合の歯髄,根尖周囲組織,歯根膜各々の組織変化を検索した. 1.BAGを使用した実験群では術後4週でdentin bridgeが形成されたが,緻密ではなく多孔性であった.これは粒子間の肉芽組織の残存によるものと考えられる.一部で胞体が大きく活性化した象牙芽細胞がdentin bridgeと接して認められた.2.根尖病巣形成後に,BAGを根管内に貼薬することで根尖部の治癒促進・硬組織形成を図ったが,BAGを根尖部まで流入させることが困難だったこと,抜髄・根管形成後,根管内と根尖病巣が十分交通しているわけではなかったことから,根尖病巣内へのBAGの影響はほとんど認められなかった.BAGを何か流動性のある基材と混合することで根管内への応用が可能となることが予想された.3.穿孔部に接した歯根膜では形成された肉芽組織に対してBAGの強力な骨伝導能が発揮されて骨芽細胞が活性化し骨が大量に形成された.しかし一部には異物反応が生じて骨形成が阻害されている箇所や粒子間に肉芽組織が残存している箇所があり,髄床底の封鎖が不完全になる危険性がある.封鎖性向上のためにBAG粒子単体ではなく,他の基材と結合した方がより良好な結果が得られるものと考える. 今回の一連の実験で,BAG粒子の持つ優れた骨伝導能が象牙芽細胞・骨芽細胞に対して発揮された結果,これらの細胞の活性化と著しい硬組織形成が認められ,歯内療法学の分野での有用性が示唆されたまた一方,BAGは,単独で使用すると慢性炎症をおこしたり異物巨細胞が出現したりするので,組織内を拡散させないため,何か基材と混合して使用するとより良い結果が得られると考えられる.
|