研究概要 |
インプラント周囲炎と診断され,インプラント体を除去した患者のうち同意が得られた2名からインプラント体周囲歯肉を採取し,免疫組織学的検討を行った.また,当科で口腔インプラント治療を受けた患者のうち,3名にインプラント周囲に重度骨吸収が観察された.これらインプラント周囲炎患者に従来の歯周外科治療を行い,治療効果とMMP-8との関連を検討した.さらに,インプラント周囲炎のリスク因子,すなわちオッセオインテグレーション獲得・維持を阻害するリスク因子の同定を目的に臨床疫学的検討を行った. 【方法】 1.インプラント周囲炎によりインプラント体を除去した2名の患者から採取した歯肉は,通法通り切片を作成し,HE染色ならびに抗MMP-1,-8,-13抗体を用いた免疫染色を行い,コラゲナーゼ産出細胞の局在を観察した. 2.インプラント周囲炎患者3名のうち,同意が得られた2名に対し歯周外科を行った.歯周外科施術前後にインプラント周囲溝滲出液(PICF)を採取し,従来行われている歯周検査,規格化レントゲン撮影を行った.PICF中のMMP-8の検出は抗MMP-8モノクロナール抗体を用いたWestern blottingにより行った. 3.全リコール患者136名の診療録から,オッセオインテグレーション獲得・維持を阻害すると思われる既知のリスク因子12項目を調査し,多変量解析によりリスク因子の同定を行った. 【結果】 1.インプラント周囲炎歯肉を用いて免疫組織学的検討を行った結果,炎症性細胞周囲にMMP-8の局在を認めた. 2.歯周外科前に検出されたMMP-8は,外科後には検出されなかった.そして,3カ月後のレントゲン所見では,術前と比較して,進行していた骨吸収は抑制もしくは骨添加が認められた. 3.多変量解析の結果,オッセオインテグレーション獲得阻害のリスク因子は,上下顎といった埋入部位,喫煙の有無,インプラント体の表面性状であった,一方,維持破壊のリスク因子は,埋入部位とインプラント体の長さであった.
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